ボイスの作ったメダル2024/03/26

 当館のヨーゼフ・ボイスの常設展示室にあるガラスケースの中に石膏型と鋳ぬいた金属の小さいメダルがあります。
このメダルをデザインして作ったのがヨーゼフ・ボイスです。以前当館で展覧会をお願いした銅版画家Otto Koester さんのパートナーのChirstine Fausel さんから寄贈されました。

Fausel さんの実家は南ドイツで大きな繊維会社を営んでいて創業記念年に合わせてメダルを制作されたそうです。
Otto Koesterさんはデュッセルドルフの美術学校の教授でChirstine Fauselさんは彼の学生でした、同じ学年にはボイスも在学していました。才能溢れるボイスにChirstine Fausel さんが実家の記念メダル制作を依頼したのです。 戦後まもない頃のようですが、ドイツらしい「双頭の鷲」のシャープなデザインに当時のボイスの意識が伝わる思いがいたします。
Chirstine Fausel さんは実家の事業を継いだのですがアーティストの感覚では経営は難しくその後「Boss」という企業に売却したとご自身が話していました。

ヨーゼフ・ボイスからのメールアート2024/03/07

 明後日から始まるヨーゼフ・ボイス展には1976年にボイスから届いた一枚のハガキが出品されます。
このハガキは若江漢字さんがドイツ滞在から帰った翌年に世界のアーティストに世界地図が印刷されたハガキを「あなたの世界観をそこに描いてください」とメッセージを入れて送ったものです。 当時は個人情報などの守りも甘く、アーティスト・ダイアリーというイタリアから出版されている芸術家名簿などが簡単に手に入る時代でした。 返信してくれたのは音楽家のシュトック・ハウゼン、ジョージ・マチューナスやソル・リビット、リチャード・ロング、等々日本人39名、海外16名でした。
なかでもボイスからのハガキはとても興味深く魅力的な表現のものでした。 世界地図に数カ所の点と古式書体のドイツ語で「Geysir」とペンで書かれ、赤黒い色をしたその文字を斜めにかざすと緑色のような光りが反射して、子供の頃に傷口に塗った赤チンキと同じですまさに赤チンキを使ったのです そして古式書体の「Geysir」は解読するのに数年かかりましたが「間欠泉」であることがわかるとボイスの考えている世界観がグーンと具体的に迫り、さすがボイスらしい表現の素晴らしさに持つ手が熱くなりました。いまでは当館の宝物になっています。

松澤宥展が終了いたしました・2024/02/25

昨年12月に始まった松澤宥展ですが、本日が最終日でした。 1996年の初回企画展に選んだ展覧会が松澤でした。あれから30年近く経ち、時代が松澤宥に追いついてきているように思われます。
2022年の長野県立美術館での大規模な回顧展はその大きな契機になりました。今回の松澤宥展にご来館される方の多くは実際にご覧になっていました。同時開催のご自宅近く下諏訪一帯での松澤関連イベントもご存知でしたし、前知識の豊富さにこちらが刺激されるほどでした。 これからもじっくりと理解が深まる松澤作品は様々な分野への今後の拡張作用が楽しみです。 この展覧会がこれからの松澤作品への一つの入口となってくれることを願いつつひとまずは閉展。 ご来館いただきました皆さまへ感謝申し上げます。

松澤宥さんとカスヤの森現代美術館2023/12/09

2020年の当館での松澤宥生誕100年展の事は今でも記憶に生々しく残っています。
お誕生日にピッタリ合わせて2月2日に100歳の誕生会を計画しました.。お嬢様の久美子さんもいらっしゃって松澤さんの写真を置きBirthday cakeを来館された方々と分けあって食べたのでした。
そしてダイアモンド・プリンセス号の乗船客がCOVID-19に感染していたことが判明したのが2月1日でした。それがコロナ感染の悪夢の第一歩となり、人と人が集まることが出来なくなってしまいました。いまだにオープニングパーティーは自粛中です、もう4年近くになります。
今回の松澤宥展には当館と関わりのある松澤さんのパフォーマンス写真などが展示されています。例えば1986年10月18日16:00から行った「土と火」は「神奈川ー芸術平和への対話」展(大倉山記念館ー横浜)で行われたパフォーマンスです。 また、当館での2002年の「言明-公案」は松澤さんの文章をよく通る声で読んでいる映像も流れています。 理論物理学を土台にした作品を観たあとに興奮して話すギタリストの話はとても興味深かいものでした。

明日から松澤宥展がスタートします。2023/12/06

 師走に入りいよいよ来年開館30周年の記念年を迎えます。

一足早く、最初の企画展「松澤宥展」が明日から始まります。
カスヤの森現代美術館が1994年に開館し、その翌年に初めてとなる企画展を松澤宥の一作展「量子芸術宣言」で開催いたしました。 それから30年を経て、松澤宥(1922~2006)の評価は高まり、文字や文章を美術作品と同じ分野に出展することで概念芸術の先駆者と世界的な評価を得ています。
今回は作家本人がカスヤの森現代美術館で行った2度のパフォーマンスの貴重な記録写真やその時の作品などを中心として展示いたしました。現在起きている様々な問題について早くから警鐘を鳴らしたメッセージもあります。
ないかとご多忙の折とは存じますが、ひととき異次元の世界観に踏み入ってみてはいかがでしょうか。

−流転のなりゆき−がスタートしました。2023/09/03

 残暑の厳しい中でしたが大勢の方々がオープニングに来てくれました。 昨日から始まった古堅太郎・福田惠・武田竜真の3人展「流転のなりゆき」、それぞれ広島、ベルリンから展覧会のために来てくれました。武田さんのフライトが1日遅れたりしましたが、オンラインでの展示の打ち合わせも済んでいたせいか、いたってスムースに進みとても見応えのある展示になりました。

子育て世代のカップルも多く賑やかで家族的な雰囲気のパーティーでした。
3人の作家それぞれに現代社会への考えや意見を作品に込めて制作されています。3人はベルリンに滞在・制作していた時に知り合ったそうです。武田さんは7月から8月にかけてベルリンでも展覧会があり、それが終わってすぐにこちらへの向かわれたようです。パーティーが終わって古堅さん、福田さんは広島へ、武田さんは次の滞在先の東京へ向かって去ってゆかれました。 作家の皆さま、ご来館いただきました皆さま有難うございました。 会期は11月19日までと先が長いのでお知り合いの方へもご案内していただけましたら嬉しいです。

永遠回帰の島ーエーゲ海2023/07/23

坂倉新平さんの絵に描かれているブルーは度々訪れたエーゲ海のパトモス島の青だと思う。 立花隆の「エーゲ海 永遠回帰の海」にニーチェの「ツアラツストラはかく語りき」から下記のような言葉が書かれている。
一切は行き、一切は帰る。
一切は死滅し、一切は花開く。
一切は敗れ、一切は新たにつぎあわされる。
一切は別れ、一切は再び相まみえる。
存在の円環は永遠にみずからに忠実である。
すべての刹那に存在ははじまる。
万物は永遠に回帰し、我々自身もそれとともに回帰する。
坂倉さんはご自身が15歳まで寺で育ったことが内面的な基礎となっていると書かれています。 エーゲ海に感じる心はきっとこのような仏教的な結びつきによるものではないかと思われる。

坂倉新平さんの展覧会です。2023/06/09

 坂倉新平さんは岐阜県羽島のご出身です。 今年の1月から3月にかけて岐阜羽島の不二竹鼻町屋ギャラリーで展覧会があり観にゆきました。賑やかだった頃の面影の残る街並みのなかに 町屋を改築したギャラリーでした。通りに面して建築家の坂倉準三先生の生家である酒の醸造所があり、新平さんは生前準三先生に可愛がられたと聞きます。
1965年のパリの画廊での個展ポスター、全て手書きで作ったそうです。

若い頃にギリシャのパトモス島に魅せられた坂倉新平さんの構成された風景画にはパトモスを彷彿させるものがあります。 15歳までを浄土宗の寺で育ったこともあり、ー自分の仕事は「行」の場と考えあまり観念的にならないよう注意して仕事を進めているーと書かれています。 その坂倉新平さんの単純で深い絵画表現に触れて見てください。
紫陽花が見頃を迎えています。

ヴァリーとエゴンそしてエディットさん、ご帰宅です。2023/05/28

 昨日、長らくご滞在くださった宮崎さんの人形ヴァリー、エゴン、エディット、そして枢機卿と尼、などの作品が箱に収められそれぞれの自宅に戻りました。 岡山から搬出作業のために出向いてくださった宮崎さんには本当に感謝申し上げます。軽々とエディットさんを抱える宮崎さんはまるでエディットさんの母の姿でした。

犬島の冠もぴったりと似合っていました。
だれもいなくなったラウンジや展示室はこれからはシーレファミリーロスになりそうです。
せっかくの機会に当館でもいくつかの作品を収蔵いたしました。 今日からエントランスのガラスケースに置かれ、来館される方を迎えていますのでどうぞお気に留めて観てみてください。

 梅雨入りを前に竹林の紫陽花が色とりどりの花が見頃になります。 カスヤの森現代美術館でのひとときをお楽しみください。

宮崎郁子さんの「ヴァリーとエゴン」展がスタートしました。2023/03/12

  昨日から当館で2回目の宮崎郁子さんの"Walky and Egon"エゴン・シーレと共にが始まりました。
オープンイングにぴったりの晴天の空に満開の桜が晴れやかでした。
都美術館でのエゴン・シーレ展に合わせて日曜美術館でも宮崎さんと作品が詳しく紹介されましたので昨日はそのテレビ番組を見た方が大勢お出かけくださいました。
岡山からしっかりと梱包された数多くの箱の中に優しく包まれた人体が横たわっています。寝ている子供を抱き起すかのように宮崎さんの腕に抱きかかえられるシーレとヴァアリーさん。
ラウンジのカフェスペースにはシーレと奥さまのエディットさんが向かい合わせに座っています。